旅行

きっと忘れない 漁師さん編

 
いくつだと思う?
当てたらタコをひとつあげるよ
 
そう言って楽しそうに笑う男性は
小柄で細身の漁師さん
 
同行した写真仲間に年を尋ねられ
ピタリと当てたら 今獲ってきたばかりのタコをくれると言う
 
深く刻み込まれた顔のシワから
そこそこのお年かとも思えたけれど
そのきびきびとした動きを見ると 案外お若いのかもしれない
 
P6160041.JPG
 
いくつだろう‥
あれこれ思案していたら
 
隣にいた写真仲間が 大きな声で「77歳 」と答えた
 
「 93! 93だ 」
 
漁師さんは愉快でたまらないといったふうに
笑っている
 
P6160049.JPG
 
それにしても93 とは
すごすぎる‥
 
船の中の巨大なタコが ゆっくりと動く
いったいどれくらいの重さがあるだろう
 
感心してタコを眺めていると
生きてるから 触ってみろと言う
 
ぬるぬる ぬめぬめ
無理です‥
 
P6160047.JPG
 
予め用意してあったシートを船の上に被せ
漁師さんが 昔話に花を咲かる
 
浜言葉はとても難しくて 話してくれることの7割が分からない
足りない部分は想像力で補いながら相槌を打ったのだが
 
カンの鈍い私にも
彼が勇敢で 聡明で やさしい人であることだけはよく分かった
 
P6160036.JPG
 
P6160093.JPG
 
「それじゃあ 先がありますからこの辺で
いろいろとありがとうございました」
 
挨拶をすませ
互いに船から離れた途端
 
シートをかけただけの船に カラスがやって来るのが見えた
そうか あれはカラス避けのためのシートだったのか
 
カラスは青いシートの周りをピョンピョン移動しながら 隅をつつき始める
 
P6160091.JPG
 
知らせなきゃ と思った瞬間
写真仲間の声がした
 
「 カラスが来てるよ 」
「 タコを狙ってるよ 」
 
「 あぁ いいんだ 」 と片手を上げる漁師さん
なんだか めちゃくちゃ かっこいい
 
ゆっくりと時間が流れる初夏の一コマ
 
P6160096.JPG
 
もうこの漁師さんにお会いすることはないかもしれないけれど
きっと私 この日のことを忘れない
 
 
おまけ
P6120042.JPG
で タコってなに?
 
 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です