家族・友人

長都沼

初めて長都沼に行ったのは、夫が亡くなる数年前でした。
いい所らしいよ。
夫があまり嬉しそうなを顔をしてそう言うので、しぶしぶついて行くことになりました。
その日は風の強い寒い日で、沼に着いてすぐに手の先が冷たくなりました。
生きものの姿は何処にもなく、
静まり返った沼で 葦原が音をたて なびいていたのを覚えています。
PB180112.JPG
数日前、知り合いを長都沼に案内しました。

空は、雁と白鳥でいっぱいでした。
陽の光に透けて見える白鳥の美しいこと。
あれはマガン。
あっちはヒシクイかな。
水を蹴って走り、飛び立って行くものもあります。
PB180237.JPG
穏やかな水面には、肩を並べて飛んでいく白鳥の姿が映り込んでいました。
PB180242.JPG
何もいない沼の縁で、夫は一緒に写真を撮ろうと言いました。
そんなことを言われたのは初めてだったので 私は大いに驚きました。
 夫がコンパクトデジカメをセットして、2枚ほど写真を撮りました。
写真の中には私の肩に手を回し、口を真一文字に結んだ夫が写っていました。
知人と並んで立って、次々と舞い降りる白鳥を眺めました。
夫にも、これを見せてあげたかった‥。

POSTED COMMENT

  1. julia より:

    秋から冬の写真、毎回素敵ですね。
    おまささんの文章は、決して多くを語らずシンプルなのに
    心に深く浸み込むのはなぜでしょう?
    そして写真にも心が写っているように感じます。
    今まで美しい写真やかわいい動物たちの写真を見て感動はしましたが、心にずっと残る写真にはあまり巡り合っていませんでした。
    おまささんの写真は、1枚1枚にその時の心やあたたかさが写りこんでいるような気がして、振り返って何度でもみてしまうのです。
    先日、大好きだった高倉健さんが亡くなりました。
    私の年代ですと、任侠映画は見ていませんので南極物語からですが、寡黙で多くを語らずとも表情で演技をする健さんは昔から大ファンでした。
    芸能人の方が亡くなり、こんなに深い失望感を感じたのは初めてです。
    そう感じているのは、きっと私だけではないはずです。
    なぜかおまささんのブログを見ていて、私は健さんを偲んでいます。

  2. mimiha より:

    ジュリアさんのコメントが、いつも私が感じたり思っていたりすることと
    まったく同じで、思わず書き込みしてしまいした。
    ご主人さま、きっと素晴らしい方だったに相違ありません。
    いつもちゃんと、おまささんの傍にいらっしゃると思うのです。
    それでも、姿が見たい時ありますよね>< 
    見えないけれどもあるんだよ  って金子みすゝさんの詩にありました。見えないけれどもあるんだよ・・・・・  

  3. おまさ より:

    julia 様
    拙いブログをこんなにも褒めて戴いて、ちょっと恥ずかしいけれど
    ありがとうございます。
    夫は不器用な人でした。それもとびっきり。
    真面目で、不器用で、一生懸命で。
    私達家族はみんな、そんな夫が大好きでした。
    健さんのようにかっこよくはありませんでしたけれどね。(笑)
    長都沼で渡り鳥を見る度、あの寒かった日のことを思い出します。
    色褪せない思い出ってあるんですね。

  4. おまさ より:

    mimiha 様
    見えないけれどもあるんだよ。
    そうですね。私もそう思います。
    美しい風景に出会ったとき、時々思うんです。
    私が夫の目になって、この風景を見よう。
    私が夫の手になって、シャッターを切ろう。
    姿は何処にも見えないけれど、きっと共にあるのだと思います。
    コメントをありがとう。

  5. みゃおまま より:

    素敵な思い出。
    並んで飛び立つ白鳥の姿が、当時のおまささんとご主人のようですね。
    もう一枚は、競争、もうすぐゴールテープを切る、鼻の差!^^

  6. カタナンケ より:

    こころにしみる 風景、、 言葉、、
    思い出って ふしぎね、、
    目で見て 思い出し においで ふっと 戻り
    さわって このてざわり、、と 思い出し、、
    ソノ記憶は たんに 脳に きざまれている、、と
    いうことでなく  どこか 底の底の
    秘密の小部屋に ひっそりと しまわれている、、
    ひげくんは 同じひげをはやしていても(うちのは
    真っ白だけどね)家の夫より
    とてもスマートな 男性だったよね、、
    ご一緒で写真を撮るにも 「 肩に手をまわし〜〜」
    う〜ん
    うちは  わたしが えいやっと 夫の手を
    わたしの肩に まわす風景だわ〜〜

  7. こよみ より:

    素敵な風景、素敵な写真。
    そしておまささんの傍にはいつもご主人が。
    きっといつも見守って下さっているのですね。
    私もいつもそう感じます。

  8. 花散る里 より:

    記事を読みながら泣いてしまいました
    忘れられない場面てありますよね
    その一つが春の桜です
    車の窓を全開にして桜吹雪の中を走った時の数分間
    7年経った今でも思い出します
    窓から手を伸ばしていた夫の笑顔と一緒に・・・
    大切な大切な思い出です

  9. おまさ より:

    みゃおまま様
    私にとっては不思議な思い出なんです。
    シャイで無骨な夫が 自分から2人で写真を撮ろうって言い出すなんて‥。
    年をとってから、こういったことは後にも先にもこの時1回限りのことでした。

  10. おまさ より:

    カタナンケ様
    底の底の 秘密の小部屋ですか。
    そこに入ると大切な人が変わらず居て、束の間その頃に戻れる。
    たくさんの部屋を残してくれた夫や子供達に感謝しなくっちゃいけないですね。
    カタナンケさんが、えいやっと‥。
    かわいい人ですね。

  11. おまさ より:

    こよみ様
    ありがとうございます。
    夫もそうですが、親切な友だちやご近所さん、それに子供らや親兄弟が
    陰になり日向になり トンチンカンな私を守ってくれています。
    ブログ仲間もね。
    ほんとうにありがたいことだと思っています。

  12. おまさ より:

    花散る里
    ご主人様の笑顔が私にも見えました。
    伸ばした手に落ちる桜の花びらも。
    大切な人への想いは、いつまでたっても褪せませんものね。

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